PRAISE TOPICS

組織心理学視点から考察する 「企業理念の浸透と組織文化のつくり方」

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  • 理念浸透

「パーパスを策定し、社員の求心力をあげたいが、どのように浸透させていけばいいかわからない」「イノベーション創出やDXに向け、組織を活性化したいがうまく進まない」などといったお悩みをお持ちではないでしょうか。また、それには各々の社員が自ら考え、自ら率先して行動を起こすこと、すなわちボトムアップで組織を活性化していくことが重要だと理解してはいるものの、本当にそれでうまくいくのか部下を信頼しきれず踏み切れない、という企業も多いのではないだでしょうか。

これらの解決に向けた実証実験において、ボトムアップの組織変革を後押しする「社員間で共有したい価値観や信念」は、社員が日々交わす「称賛」を活性化・把握するとともに、各社員が選ぶ最も組織に貢献した人”MVP“を把握することによって可視化されるという示唆が得られました。
本稿ではその詳細に加え、心理学的視点を踏まえた具体的な進め方の仮説をご提示します。

 

ボトムアップの組織変革

イノベーション組織への変革に向けて、ボトムアップで組織を活性化していくにはどうすればよいのでしょうか。まずは、社内のコミュニケーションを、従来のようにトップダウンで上からの指示に従うようなタテのコミュニケーションから、組織の枠組みを超えたタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションへと変えていく必要がある。組織づくりを“マネジメント(トップダウン)型”から“エンゲージメント型”へ転換させるのです。これには、分断化された組織をつなぐ横のつながりを作ると同時に、風通しの良い組織風土改革を推進していくことが必須だと考えられます。そして、この“エンゲージメント型”組織におけるタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションのサイクルを回すきっかけとなるのが「称賛」なのではないでしょうか。

 

 

このような仮説に基づき、称賛文化と企業パーパスの浸透を可視化する「PRAISE CARD」を開発、複数の企業において実証実験を進めています。
ある企業におけるPRAISE CARDを用いた実証実験においては、下図に示す通り、アンケート回答者の62%がブランドバリューの内容を理解し、そのうちの半数は納得感を持ち、日々の業務への反映にも繋げています。そして、その回答者のうち約4割がパーパス・ブランドバリューの理解にPRAISE CARDの利用が有用だったと感じている。すなわち、カードを用いて社員同士が互いを称賛しあうことが、パーパスやブランドバリューの理解に効果的だという結果が出ているのです。
さらに、実証実験の結果を、従業員の心理・行動やマネジメントの研究を専門とされている東京女子大学の正木郁太郎氏に分析していただいたところ、興味深い気付きが得られました。

 

・PRAISE CARD実施後のアンケート分析

 

理念の浸透を可視化するカギとなるか!?
社員間で共感したい価値観を浮かび上がらせる「MVP」

そもそも、パーパスや経営理念、ブランドバリューとは、成文化された価値観や信念であり、その価値観や信念を組織に浸透させていくというのは、主にオーナー目線によるトップダウンの取組です。一方で、社員の中にも行動の軸となる価値観が存在している。それが組織文化です。それはその組織の中で重視されている価値観や考え方の前提に基づく行動の集積であり、いわば集団現象です。すなわち、ボトムアップでパーパスや理念を浸透させていくには、ボトムアップの価値観である組織文化を把握することも非常に重要ではないかと正木氏は言います。

この考えに基づき、ある企業におけるPRAISE CARDの実証実験において、「MVPカード」を導入してみることとなりました。パーパスや経営理念に基づき互いを称賛する通常のカードのほかに、期間内の「MVP」を称賛するカードを使用し、MVPカードを受け取る社員は日頃どのようなことを称賛されているのかという傾向を把握しようというのです。

その結果、この企業においては、社員が「MVPだ」と評価する人は日頃、特に次のような特徴を称賛されているということがわかりました。

 

・MVP称賛から読み解くもらった人の特徴

 

この傾向が把握できれば、社員にとって特に大事な価値観とその優先順位をある程度可視化することが可能であると考えられ、ボトムアップでのパーパス・理念の浸透をさらに後押しすることが可能になります。

これらの結果を踏まえ、正木氏はさらに「重要なのはステップではないか」と仮説立てています。ボトムアップで理念浸透をはかるといっても、いきなりそれを目指して施策を打つのではなく、まずは社員同士が互いに感謝・称賛することに慣れ、社員間の関係を構築することから始める。カードで言うと、ライトな「ありがとうカード」のやり取りなどから始めるイメージです。その上で、価値観カードを導入し、文化の可視化・強化をする。それからようやくMVPカードを導入したり、経営と現場の対話を行ったりする。このステップを丁寧に進めることが、重要なポイントなのではないでしょうか。

この理論に基づき、今後も「感謝・称賛」を活用した組織づくりの検証を続けています。

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