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自律的な行動を促す「内発的動機付け」とは?

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カテゴリ:
  • 人材育成
  • 組織マネジメント

内発的動機付けという言葉を知っているでしょうか。

内発的動機付けとは、個人の内的な欲求が自発的な行動を引き起こすモチベーションとなることを言います。この考え方は、アメリカの心理学者であるエドワード・L・デシ氏によって1970年代初頭に提唱された動機付けの概念の一つで、当時のモチベーション理論の定説となっていた「行動主義的アプローチ」に反論する形で提示されました。

「組織強化に向け、どうすれば従業員のモチベーションを上げられるか」「部下が離職せず自律的に働き続ける組織を作るにはどうすればよいか」といった課題を持つ企業にとっては重要なキーワードです。

そこで今回は、この内発的動機付けについて詳しくご紹介します。

 

行動主義的アプローチとは

心理学において1940~1960年代に隆盛していた行動主義的アプローチとは、人の行動を内的・心的な要素によらず客観的な事実のみで捉える考え方で、人は「ある条件を与えればある反応を示す」つまり「報酬(アメ)と罰(ムチ)を与えることで、人のモチベーションは上がったり下がったりする」と考えられていました。

この行動主義的アプローチについてのわかりやすい例として、アメリカの心理学者であり行動分析学の創始者といわれるバラス・フレデリック・スキナー氏の「オペラント条件づけ」があります。

「オペラント条件づけ」とは、行動に対する報酬と罰の学習理論です。例えばマウスを使った実験で、LEDが点灯している時にマウスがボタンを押すと餌を与え、消灯時にボタンを押すと電気ショックを与えると、マウスはLEDが点灯した場合にのみボタンを押すようになります。この実験結果から、「行動は報酬(餌やお金)によって動機付けられる」と説明されました。

 

内発的動機付けとは

これに対するデシ氏の反論は、「人は餌やお金のような外発的動機付けがなくとも、内なる心理的欲求に駆られて自由選択的に行動するものだ、課題それ自体に喜びや満足をもって取り組むものだ」というものでした。この、内なる欲求に基づく自由選択や、課題に取り組むこと自体が喜びや満足とつながって行動の動機付けとなることを「内発的動機付け」と呼びます。

では、この内発的動機付けを効果的に行うために、押さえるべきポイントは何でしょうか。

 

内発的動機付けに影響を与える2つの効果

①外的報酬は内発的動機付けを低下させる(アンダーマイニング効果)

昇給や昇進など外部からの報酬が与えられることはモチベーションを高める上で強い刺激となります。この外的報酬は一度使い出すと簡単に辞めることができず、報酬がないとやらない状態に陥る。外的な報酬による依存度が高まり、もともとの楽しさや自由な意志の感覚を削ぎ、自発的なやる気が失われてしまうという現象があります。これをアンダーマイニング効果と言います。

アンダーマイニング効果は、具体的には以下のような実験から明らかにされました。

実験では、パズルが好きな大学生をAとBのグループに分類し、3日間のパズルを解くスピードの変化を計測します。初日は自由にパズルを解かせましたが、2日目にグループBのみ「完成につき1ドル」の金銭的報酬を与えました。そして3日目は、両グループ共に報酬なしで計測しました。その結果、グループBは報酬を受け取った2日目のみスピードが上がりましたが、3日目は初日よりスピードが下がりました。

先に述べたように、かつては餌やお金のような物質的な報酬には、内発的動機付けを高める効果があると考えられていました。しかしこの実験により、ある活動に対する外的な報酬として金銭が用いられる場合、被験者はその活動自体に本心からの興味を失うことがわかったのです。

②言語報酬による外発的動機付けは、内発的動機付けを高める(エンハンシング効果)

ただし、外発的動機付けがすべてアンダーマイニング効果を示し、内発的動機付けを低下させるというわけではありません。先の実験において、金銭的報酬を言語報酬(褒めるなど)に変えると、逆に内発的動機付けを高めることも明らかになりました。この現象をエンハンシング効果と言います。

また、そもそもアンダーマイニング効果は内発的動機付けが高まっている場合に現れる現象であるため、 内発的動機付けが低い状態においては、外発的動機付けがモチベーションを上げる効果を発揮します。

つまり、この外発的動機付けと内発的動機付けの方法が重要であり、外発的報酬として金銭ではなく「称賛」を与えることで、最初は「他人から褒められたい、評価されたい」というモチベーションだったものが、続けるうちにその行動自体にやりがいや楽しみを見出してモチベーションが高まり、「やりたいからやる」という自律的行動へとつながっていくのです。

 

内発的動機付けを生む3つの心理的欲求

最後に、内発的動機付けに関連して押さえておきたいのが、エドワード・デシ氏と、同じくアメリカの心理学者であるリチャード・ライアン氏によって提唱された「自己決定理論」です。この理論によると、人間は「自律性の欲求」「有能性の欲求」「関係性の欲求」という3つの基本的心理欲求を持っており、それらを充足することによって健康で幸福に生きられます。すなわち、行動を起こすための内発的動機付けにおいて、この3つの心理的欲求を満たすことが非常に重要となります。

内発的動機付けがさらに進むと、のめり込みへの極致というべき「フロー状態」になります。寝食忘れて没頭するほどの没我の境地は、内発的動機付けが最大化されている状態とも言えます。活動それ自体が喜びとなると報酬は意識しなくなっていくでしょう。充足感や喜びをもたらす内発的動機づけを高めることで、個人の成長そして、組織の成長を促していきます。

このように、従業員のモチベーションを向上させ、自律的な行動を促すために重要な「内発的動機付け」を高めるには、「称賛」が大きなキーであると言えます。PRAISE CARDは、組織に「称賛」文化を根付かせるために有効に活用できます。ご興味のある方は、ぜひトライアルしてみてください。

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