データで解き明かす「称賛」の力
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カテゴリ:- コミュニケーション
- 人材育成
「組織を良くしたい」という想いがあっても、現時点で組織がどのような状態にあるのか、また実行した施策が本当に効果を発揮しているのかを、客観的かつタイムリーに把握することは容易ではありません。多くの人事部門の方々が、こうした課題を感じているのではないでしょうか。
近年、組織の状態把握を目的としてエンゲージメントサーベイを実施する企業が増えています。しかし、その実施頻度は年に1〜2回程度にとどまり、可視化される結果も、過去の記憶に基づいた「静的なデータ」となりがちです。組織の状態を定点観測するという点では有効ではあるものの、変化の兆しを捉え、適切なタイミングで打ち手を講じるには、必ずしも十分とは言えません。
リアルタイムで「組織の今」を映し出す、感謝・称賛データ
管理職が緊急度の高い細かな業務に追われると、心理的な余裕を失い、情報伝達が一方通行になりがちです。その結果、部下とのやり取りは単純な作業指示に偏ってしまいます。
部下の立場から見ると、上司があまりにも多忙なため「声を掛けるのも申し訳ない」と感じ、次第に相談しづらい雰囲気が生まれます。こうした状況では、仕事の目的が共有されず、部下は言われたことを盲目的にこなすだけになり、成長実感を得る機会を失い、その結果、モチベーションが低下し、離職リスクが高まります。部下の離職リスクやモチベーション低下に直面した上司は「何とか対応しなければ」と考え、ますます業務に追われる――こうして負のサイクル(バッドサイクル)が回り続けるのです。
図1:デジタル称賛カードを贈り合えるサービス「PRAISE CARD」

*BIPROGY/博報堂コンサルティング/博報堂による共同事業であるPRAISE CARDは、専門的な知見を持った3社による開発/サービス運用が特徴です。
PRAISE CARDの3つのポイント
組織においてPRAISE CARDを日常的に利用することで、「誰が・誰に・どのような行動に対して」感謝や称賛を贈っているのかといった行動データを、ログとして継続的に蓄積できます。このデータを有効活用することで、感謝・称賛を単なる「いい話」にとどめるのではなく、組織内の関係性や信頼の流れを可視化する動的なデータとして捉えることが可能になります。
図2:感謝・称賛を行動のログデータとして蓄積

こうした動的なデータを継続的に分析することで、
• 組織が活性化に向かっているのか、停滞の兆しがあるのか
• 部門を越えた協力や越境行動が生まれているのか
• 信頼が一部の人に集中していないか
などを、感覚ではなく事実として捉えることが可能になります。
成功循環モデルというフレームワークの活用
動的なデータを分析することで、組織のさまざまな状態を可視化することができ、現在の状態に最も相応しい施策を打つことも可能になります。ここでは、組織の状態を可視化するにあたり、ダニエル・キムが提唱した、組織が成果を上げ続けるためのサイクルを表現したフレームワークである成功循環モデルを取り上げます。
図3:成功循環モデル

成功循環モデルには4つの質(関係、思考、行動、結果)があり、関係の質を起点にしたもの(関係→思考→行動→結果→関係…)をグッドサイクルと呼んでおり、組織において次のような前向きな変化を生み出します。
・関係の質:日頃の会話や対話を通じて互いに信頼し合う
・思考の質:異なる考え方や価値観に触れることで新たな気づきを得る
・行動の質:仲間を巻き込みながら、新たな気づきを自発的に実践してみる
・結果の質:これまでとは異なる良い結果が生まれる
・関係の質:さらに信頼し合えるようになり、会話や対話が増える
この成功循環モデルをより実践的に活用するために、図4のように発展的な解釈をしてみます。
図4:成功循環モデルの発展的な解釈
成功循環モデルの適用を繰り返していく中で、「思考の質をどこまで高めることができるか」が肝となることが分かったため、砂時計のように「関係→思考(下部分)」と「行動→結果(上部分)」に分割して考えることを提案しています。
「関係→思考」は砂時計の土台となっており、成果を上げ続ける組織においても土台となります。この土台の頂点(図4の赤丸)が「思考の質が高まった状態」で、ここまで到達できた人に対しては、組織がチャンスを与えることで自発的な行動が生まれ(図4中の展開・発散)、自ずと結果はついてくると考えています。
感謝や称賛を受けた管理職の心理的変化
では、成功循環モデルと感謝・称賛はどのような関係にあるのでしょうか?
互いに相手の良いところを見つけて感謝・称賛を贈り合うことで、「関係の質」が向上することは容易に想像できると思うので、ここでは「思考の質」について考えてみます。
関係の質が向上した状態で、互いに称賛を贈り合うことで2つの効果が生まれます。
①自分が称賛されることで、自身の提供価値に気付く
②相手を称賛することで、自身の価値観を再認識できる
①は360度評価に近いかもしれませんが、自分では当たり前と思っていたことが相手からすると称賛に値するものであった場合、自身の提供価値に気づくことができます。
②は心理学でも言われていることで、「自分自身が相手を称賛するポイントは、自身が大切にしている価値観に近い」というものです。例えば、「あなたはグッドパートナーです!」という称賛をよくする人は、自身が「仲間とのつながり」を大切にしている傾向があるといえます。
このように称賛すること、称賛されることを通じて、自分の提供価値や価値観を内省できます。また称賛することで相手の価値観にも気付くので、自身と相手の価値観の違いがなぜ生じているのかを考えることで、自分の役割が明確になり、オーナーシップが芽生えてきます。
また、「誰が・誰に・どのような行動に対して」感謝や称賛を贈っているのかといった行動データから、組織コミュニケーションをネットワーク図で表現することができます。これは感謝・称賛のネットワークなので、業務上のつながりとは異なる「信頼ネットワーク」を可視化することができます。
図5:キーワードは「オーナーシップ」と「信頼ネットワーク」

PRAISE CARDの利用によって蓄積された実際の行動データを分析することで、次のようなさまざまな気付きが得られました。
・ 感謝・称賛を通じて、オーナーシップがどのようなプロセスを経て芽生えていくのか
・ 感謝・称賛のデータから、業務上の組織構造とは異なる信頼ネットワークがどのように可視化できるのか
これらは、組織の状態変化をいち早く察知し、施策を講じ、その効果を確かめ、次のアクションにつなげるための“先行指標”となるものです。
さらに、組織の状態を定点観測する目的で実施するエンゲージメントサーベイと組み合わせることで、組織状態の解像度を一層高めることが可能になります。
本コラムでご紹介したPRAISE CARDにご興味をお持ちの方は、ぜひこちらよりお問合せください。
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セミナー開催概要
• タイトル:データで解き明かす『称賛』の力
〜感謝・称賛データが示す組織変革のリアル〜
• 開催日時:2026年6月3日(水) 14:00~15:00
• 登壇者:
BIPROGY株式会社 グループマーケティング部 小谷野 圭司
株式会社日本能率協会マネジメントセンター シニアHRMコンサルタント 中川 聡太