弱い紐帯の強み
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カテゴリ:- コミュニケーション
- 組織マネジメント

「弱い紐帯の強み」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
弱いことが強みである!? 一見矛盾したことを言っているようですが、マーク・グラノヴェッターというアメリカの社会学者が1973年に “The Stregth of Weak Ties”(弱い紐帯の強み)という考え方を提唱しました。強いつながりからの情報は大抵予想される話であるのに対して、弱いつながりからの情報は自分でも気付かなかった発見にあふれており、本人にとって多くの気付きが隠されているため、「弱い紐帯(つながり)は強みである」としています。
仕事の関係性でいうと、同じ組織内でいつも会話しているメンバー同士は「強いつながり」、会議などでたまに一緒になる他部署の人や、異業種交流会で名刺交換した相手などは「弱いつながり」と言えます。
弱い紐帯の両端には、つながり合う個人がいますが、その個人は自身が所属する組織(コミュニティ)と強いつながりを持っています。弱い紐帯で個人同士がつながると、その背後にある組織(コミュニティ)が持つ異なる考え方や価値観が弱い紐帯を伝って流れてくるので、新たな視点が欲しいときや、思考をジャンプさせたいときなどに威力を発揮します。(図1)
図1:強いつながりと、弱いつながり
このように弱い紐帯にはメリットが多いのですが、その「弱さ」ゆえ、つながっていることを忘れてしまったり、時間の経過と共につながりが消滅してしまう等のデメリットがあります。異業種交流会で多くの名刺を交換したにもかかわらず、その場限りになってしまう経験をお持ちの方は少なくないはずです。
では、弱い紐帯の存在が忘れ去られてしまうのは、何故でしょうか?
その原因の一つに「記憶に残らない」ということが挙げられます。心理学では単純接触効果(ザイオンス効果=興味がなかった物や人に対して接触を繰り返すことで、興味が芽生えてくる心理的現象)によって記憶に定着させられるとしていますが、弱いつながりの人と会う回数が少ないのは当然なので、この方法は難しそうです。そこで、回数を増やすという量的なアプローチではなく、数少ない接点での体験価値を高めるという質的なアプローチを考えてみます。
体験価値を高める方法には、
- 相手のニーズや好みに応じたカスタマイズされた体験を提供する
- ワークショップや体験型イベントなどで、より積極的に関与してもらう
- 関連するストーリーを語ることで、相手の感情に訴えかけ、体験をより意味のあるものにする
などがありますが、会議などでたまに一緒になる他部署の人に対して①②を提供するのは現実的ではないので、③の「相手の感情に働きかける」をキーワードとして、実践可能な方法をご紹介したいと思います。
人間は感情の生き物なので、仕事だからといって急にドライになれるわけではありません。仕事においてももっと感情を表に出すべきです。似た言葉に「感情的になる」がありますが、これは自身の感情をしっかりとコントロールできずに感情に流されている状態なので、似て非なるものです。求められるのは「自分の感情を内省し、素直に相手に伝えること」であり、一つの方法として「相手を称賛する」があります。(図2)
図2:称賛を贈る/受け取る
相手を称賛するには、相手のいいところを見つける必要があるので、自然と相手の視点に立った思考になります。そして相手視点になることで、自分中心の考え方から視点が外れて、自分の感情(称賛の気持ち)を内省して素直に相手に伝えることができるようになります。また称賛を受け取る側は、称賛されたことによって自分の価値に気づいて、行動に自信を持てるように変化していきます。
話を「弱い紐帯」に戻しますと、上記のような称賛によって、自分自身(称賛を贈る側)と相手(称賛を受け取る側)に感情の変化が起き、体験をより意味のあるものにすることができます。つまり、会議などでたまに一緒になる他部署の人のように会う回数が少ないケースでも、称賛を贈り合うことによって体験が記憶に残り、弱い紐帯が、弱い状態のまま維持されるのです。
称賛カードを贈り合うというポジティブな体験によって仲間との強い絆を作り出すPRAISE CARDを活用すれば、称賛を贈り合うハードルを下げて、弱い紐帯を作り、維持することを後押しできます。(図3)
図3:PRAISE CARDを活用した称賛カードの贈り合い
またPRAISE CARDでは、誰とどのような称賛カードを贈り合ったかを、履歴として各自が確認できます。この履歴を見ることで、自分にとっての強いつながり(称賛カードのやり取りが多い人)と合わせて、弱いつながり(やりとりが少ない人)も把握できるので、価値ある「弱い紐帯」を意識した、積極的な維持・活用を推進できます。
ご興味をお持ちの方は、ぜひこちらよりお問合せください。