PRAISE TOPICS

人的資本経営における、データに基づいた「失敗しない配属・異動」

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カテゴリ:
  • 人材育成
  • 組織マネジメント

なぜ「こんなはずじゃなかった」は起きるのか?

VUCA時代に対応する機動的な組織を構築するためには、人的資本を最大限に活用することが不可欠です。そのため、各組織では採用や異動といった施策が講じられますが、配属先の行動規範や文化に馴染めずに戸惑う、いわゆる「リアリティ・ショック」が生じることがあります。その結果、個人のパフォーマンスが十分に発揮されず、採用や異動がかえって組織全体の生産性を低下させてしまう場合もあります。さらに、最悪の場合には離職につながることも起こり得ます。
企業にとって決して小さくない採用や育成への投資を行ったにもかかわらず、人的資本の増加につながらず、むしろ損失を招いてしまうとすれば、これは本末転倒と言えるでしょう。

では、なぜ「こんなはずではなかった」という期待とのギャップが生まれるのでしょうか。
さまざまな要因が考えられますが、その一つとして、スキルを主軸に採用や異動が行われている点が挙げられます。「何ができるのか」というスキルは、職務を遂行する上で重要な要素ですが、組織風土(Culture)や行動特性とのミスマッチが起きていては、土壌が整っていない場所で木が枝葉を広げられないように、せっかくのスキルも十分に活かすことができません。

図1:組織風土(Culture)や行動特性は人的資本の土壌

言語化されない「組織風土や行動特性」と「個人の価値観」

組織風土や行動特性が重要であることは、これまでも指摘されてきました。しかし、各組織においては「なんとなく存在している目に見えないもの」という感覚で捉えられ、言語化されていないケースが大半ではないでしょうか。組織内部の人にとっては、長年慣れ親しんだ「当たり前」であり、あえて言語化する必要性を感じないことが多いでしょう。
その結果、組織外部の人にとって、組織風土や行動特性を知る手段は、内部の人から得られる情報に限られています。しかし、話を聞く相手によって説明が異なることも少なくなく、結局のところ、実際に配属されて自ら体感するしかないのが現実です。

次に、個人の価値観について考えてみます。なぜ「個人の価値観」に着目するのかというと、個人の価値観と組織の風土や行動特性が重なる部分が多いほど、個人のエンゲージメントが高まり、期待されるパフォーマンスを十分に発揮できるからです。

図2:組織風土・行動特性と個人の価値観

例えば、「決められた職務やルールに従い、確実に仕事を進め、品質の安定したアウトプットを継続する」といった「確実な業務遂行」を価値観とする人が、「未来を描き、人々にエネルギーを与えながら推進する」といった「未来志向とビジョン構想力」を組織風土・行動特性として持つ組織に配属された場合、両者にはほとんど重なりがないため、個人のエンゲージメントは高まりにくく、組織から期待されるパフォーマンスも十分に発揮されない可能性が高いでしょう。
一方、この組織に「従来の習慣や規制、構造にとらわれない柔軟な発想で変革を推進する」といった「変革の牽引」を価値観とする人が配属された場合には、水を得た魚のように活躍する姿が容易に想像できます。

ここまでの説明では、個人が自らの価値観を明確に認識できていることを前提としていますが、実際には、自分自身の価値観を言語化できている人は、意外と多くないのではないでしょうか。そういう意味では、言語化されない2つの要素――「組織風土や行動特性」と「個人の価値観」――の重なりを増やすことは、思った以上に難しいことかもしれません。

 

「感謝・称賛データ」を活用するというアイデア

組織内で日常的に行われている感謝や称賛には、その組織の風土や行動特性、さらには個人の価値観が滲み出ています。なぜなら、感謝や称賛をするということは、その行動を大切にしている証だからです。
このように有益な情報となる感謝・称賛をデータ化するためには、感謝・称賛を贈り合うことができるデジタルツールの活用が効果的です。その一つが、「PRAISE CARD」です。
PRAISE CARDは、スマートフォンやPC上でデジタルの称賛カード(=ポジティブフィードバック)を贈り合えるサービスで、メールや対面での称賛と比べて心理的負担が少なく、誰でも気軽に始めることができます。

図3:PRAISE CARDを活用したポジティブフィードバック(感謝・称賛)の贈り合い

デジタルツールを活用することで、これまで可視化が困難だった感謝や称賛といった感情面の実態を、データとして定量的に捉えることが可能になり、組織や個人の解像度をより高めることができます。
一例として、称賛カードとして「リスペクト」「グッドチャレンジ」「ナイスサポート」の3種類を用意したとします。組織によって贈り合うカードの割合は同じではなく、例えば、相手を思いやり、助け合うことを重視する組織では「リスペクト」や「ナイスサポート」が多くなり、一方でイノベーションをコアバリューとする組織では「グッドチャレンジ」が多くなるなど、組織ごとの価値観や行動特性に応じた傾向を把握することができます。
さらに、個人の価値観については、自身が最も多く贈ったカードが、自分が大切にしている価値観に近いことが分かっているため、贈ったカードの枚数や内訳を確認することで、自分自身の価値観をあらためて認識することができます。

 

「感謝・称賛データ」を用いた、組織風土や行動特性の可視化

ここからは、PRAISE CARDを利用している企業で蓄積された感謝・称賛データをもとに、その企業の各組織の組織風土や行動特性の違いを可視化した事例をご紹介します。
【実施手順】

1.組織の中から、①部署あたりのPRAISE CARD利用人数が5名以上、②期間内に贈り合ったカード数が50枚以上の組織に対象を限定

2.その組織の「複数種類のカードのうち、どのカードを多く贈った・貰ったか」の情報をもとに、組織を分類(クラスター分析を実施)

3.その結果をもとに、それぞれの組織の特徴(組織風土・行動特性)をおおまかに考察

結果として最適な分類数は「4分類」となり、クラスタ(=複数の組織が含まれる)ごとに、「フロンティア精神や個人プレーが多い、いわゆる押しが強めの組織」「チームプレーを大事にする、どちらかというと下支えのような組織」といった特徴が浮かび上がり、PRAISE CARD利用企業の方から見ても納得感のあるものでした。

図4:称賛カードの種類から、組織風土や行動特性の違いを可視化

オンボーディングへの活用

ここまで、感謝・称賛のデータを活用し、組織風土や行動特性、さらには個人の価値観を可視化する方法について、事例を交えてご紹介してきました。これらのデータを活用することで、組織と個人のマッチング精度をより一層高めることが期待できます。
以下では、称賛カードとして「リスペクト」「グッドチャレンジ」「ナイスサポート」の3種類を用意した例をもとに、具体的に説明します。

「リスペクト」や「ナイスサポート」を多く贈り合っている組織は、相手を思いやり、助け合うことを重視する傾向があります。そのため、同様に「リスペクト」や「ナイスサポート」を多く贈っている人材を配属することで、組織風土と個人の価値観の一致度が高まると考えられます。一方で、VUCA時代に求められる多様性を重視し、あえて「グッドチャレンジ」を最も多く贈っている未来志向の人材を投入することで、組織のイノベーションを加速させるといった活用方法も考えられます。
いずれの場合も、データを参考に意図的な配属を行うことで、「こんなはずではなかった」という状況を未然に減らせます。さらに、仮にミスマッチが生じた場合でも、その要因を検証する手掛かりが得られるため、改善策を迅速に講じることが可能になります。
なお、現時点では、感謝・称賛データの活用によってオンボーディングが確実に成功するというエビデンスは得られていません。しかし、理論的な整合性があること、そしてそのための手段(PRAISE CARD)が用意されていることから、今後検証を進めていきたいと考えています。

本コラムでご紹介したPRAISE CARDにご興味をお持ちの方は、ぜひこちらよりお問合せください。